「衛生管理者を受けようと思うんだけど、第一種と第二種って何が違うの?」——受験を決めた人が最初につまずくのが、ここだ。結論から言うと、違いは実質ひとつ。有害業務のある業種で衛生管理者になれるかどうか。ここさえ分かれば、どちらを受けるべきかはほぼ自動的に決まる。
違いはひとつ——「有害業務」を扱えるか
衛生管理者は、働く人の健康障害を防ぐために事業場に置かれる国家資格だ。免許は大きく2種類ある。第一種はすべての業種で衛生管理者になれるのに対し、第二種は有害業務と関連の少ない業種に限られる。有害業務とは、高熱物体の取扱い・粉じん・有機溶剤・放射線といった、体をこわすリスクの高い仕事のこと。こうした業務が現場にある業種では、第二種免許では衛生管理者になれない。逆に言えば、オフィスワーク中心の業種なら第二種で足りる。たったこれだけの線引きが、業種・試験範囲・勉強量のすべてを分けている。
あなたの会社はどっち? 業種で機械的に決まる
必要な免許は、本人の希望ではなく、働く事業場の業種で決まる。
| 業種 | 必要な免許 |
|---|---|
| 農林畜水産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業 | 第一種が必要(第二種では不可) |
| 情報通信業・金融業・保険業・卸売業・小売業・サービス業など上記以外の業種 | 第二種でOK(第一種でも当然可) |
ポイントは、第一種が完全な上位互換であること。第一種を持っていれば業種を問わず衛生管理者になれるが、第二種は「有害業務と関連の少ない業種」専用だ。転職や異動で製造業・医療業などに移る可能性が少しでもあるなら、最初から第一種を取っておくほうがつぶしが利く。
「自分はデスクワークだから第二種」ではない 免許の区分は「自分の仕事内容」ではなく「事業場の業種」で決まる。本社勤務で一日中パソコンに向かっていても、会社の業種が製造業なら衛生管理者には第一種が要る。ここは実務でも試験でも誤解が多いポイントだ。
試験はどこが違う?——第二種は「有害業務」が丸ごと出ない
試験の中身も、有害業務がそのまま線引きになっている。
| 第一種 | 第二種 | |
|---|---|---|
| 科目構成 | 関係法令・労働衛生・労働生理の3科目。法令と衛生は有害業務に係る範囲も出る(実質5区分) | 同じ3科目。ただし有害業務に係る範囲は出ない |
| 問題数 | 44問 | 30問 |
| 試験時間 | 3時間 | 3時間 |
| 合格基準 | 科目ごとに40%以上、かつ全体で60%以上 | 同じ |
第二種は、有害業務に係る関係法令・労働衛生が丸ごと出題範囲から外れる。有機溶剤・粉じん・特殊健康診断といった暗記量の多い分野を勉強しなくてよいぶん、負担は明らかに軽い。合格率も例年、第二種のほうがやや高めで推移している。とはいえどちらも合格率はおおむね4〜5割で推移していて、「国家試験としては合格しやすい部類」。テキスト1冊と過去問の反復で十分に届く試験だ。
受験資格——実務経験の証明が要る
衛生管理者試験は誰でも受けられるわけではなく、学歴と「労働衛生の実務経験」の組み合わせによる受験資格がある。代表的なルートは、大学・短大等を卒業していれば実務経験1年以上、高校卒業なら3年以上、学歴を問わない場合は10年以上というもの。「労働衛生の実務」は健康診断の実施に関する事務、作業環境の整備・改善、衛生教育など幅広く認められており、申込時には事業者による実務経験の証明書が必要になる。自分がどのルートに当たるか、細かい該当条件は試験を実施する安全衛生技術試験協会の最新の受験案内で確認してから申し込もう。
そもそも、なぜこの資格が必要とされるのか
労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、業種を問わず衛生管理者の選任を義務づけている。従業員が50人に達した会社は、必ず免許を持つ人を置かなければならない。つまり資格保持者には社内で確実な需要があり、総務・人事のキャリアでは持っているだけで一目置かれる資格だ。事業場の規模が大きくなるほど必要人数も増える仕組みで、この選任ルール自体が試験の最頻出テーマでもある(詳しくは選任ルールの記事で扱う)。
結論:迷ったら第一種。ただし第二種も無駄にならない
まとめよう。勤務先(または行きたい業界)が製造業・建設業・医療業・運送業・清掃業などなら、第一種一択。オフィス系業種で、まずは確実に一発合格を狙いたいなら第二種でもいい。第二種に合格したあとで第一種が必要になったら、特例第一種という受験区分で有害業務に係る科目だけを受けて第一種に切り替えることができる。だから「第二種から始めて損する」ことはない。それでも二度手間を避けたいなら、最初から第一種——これがいちばんシンプルな結論だ。