「サルモネラは感染型? 毒素型?」——衛生管理者試験の労働衛生分野で、食中毒はほぼ毎回顔を出す定番テーマだ。しかも問われ方はワンパターンで、型の分類と各菌の特徴をこっそり入れ替えてくるだけ。つまり、対比表を1枚頭に入れれば安定して取れる。今回はその1枚を作りにいこう。
まず「3グループ」に分ける
細かい菌の名前に飛びつく前に、全体を3つに分ける。①感染型——食べ物の中で増えた細菌そのものが体内で悪さをするタイプ。②毒素型——細菌がつくり出した毒素が主役のタイプで、菌が死んでいても毒素が残っていれば発症する。③ウイルス性——細菌ではなくノロウイルスなどによるもの。試験の第一関門は、菌の名前を見た瞬間に「どのグループか」を即答できることだ。
感染型——菌そのものが暴れる
サルモネラ菌は感染型の代表。鶏卵や食肉などを介して、食品中で増殖した菌そのものが食中毒を起こす。腸炎ビブリオも感染型で、こちらは海水にすむ好塩性の菌(病原性好塩菌とも呼ばれる)。塩分のある環境を好むため、魚介類の生食が主な原因になる。「真水(淡水)の中でよく増殖する」と出たら誤りだ。このほか、鶏肉などを介するカンピロバクターも感染型として近年よく出題される。感染型のイメージは「菌が生きたまま腸まで届いて暴れる」。だから、加熱して菌を殺す・低温保存で増やさないという対策がそのまま効く。
毒素型——主役は菌ではなく「毒」
黄色ブドウ球菌は、食品の中で増えるときにエンテロトキシンという毒素をつくる。やっかいなのは、この毒素が熱に強いこと。加熱調理で菌自体が死んでも毒素は分解されずに残り、食べれば発症する。調理する人の手指の傷(化膿巣)から食品に付くことが多く、おにぎりや弁当が典型例だ。 ボツリヌス菌は、缶詰や真空パック食品など酸素の少ない環境で増殖し、神経毒(ボツリヌストキシン)をつくる。この毒素は食中毒のなかでも毒性が極めて強く、致死率が高いことで知られる。物が二重に見える、呼吸が苦しくなるといった神経症状を起こす点も、他の食中毒とは毛色が違う。
「加熱したから大丈夫」が通じない相手 感染型は加熱で菌を殺せば防げるが、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは加熱では壊れない。「ちゃんと火を通したのに食中毒」が起こるのはこのためだ。試験でも「エンテロトキシンは熱に弱い」型のひっかけが繰り返し出ている。
O-157・O-111——「ベロ毒素」を出す大腸菌
腸管出血性大腸菌(O-157やO-111が代表)は、ベロ毒素を産生し、腹痛や出血を伴う水様性の下痢を引き起こす。菌に汚染された飲食物から経口感染し、重症化すると命に関わることもある。予防の基本は加熱で、75℃で1分以上の加熱が目安とされる。「O-157」という固有名と「ベロ毒素」の組み合わせは、そのまま正誤問題の素材になる頻出ペアだ。
ノロウイルス——冬の主役
ノロウイルスによる食中毒は、細菌性のものと違って冬季に多発する。手指や食品を介して経口感染し、ヒトの腸管内で増殖して嘔吐・下痢・腹痛を起こす。潜伏期間は1〜2日程度。食品の中で増えるのではなく、増えるのはあくまで人の体内——という点も問われる。失活化には煮沸消毒または塩素系の消毒剤が有効だ。「ノロウイルスは夏季に多い」「主に食肉を介して感染する」と来たら、どちらも誤り。夏に多いのは細菌性、冬に多いのがノロ、と季節で棲み分けて覚えよう。
試験のひっかけはこう出る
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 「ボツリヌス菌による食中毒は感染型」 | 毒素型。分類の入れ替えが定番 |
| 「サルモネラ菌による食中毒は毒素型」 | 感染型 |
| 「腸炎ビブリオは真水でよく増殖する」 | 海水を好む好塩性の菌 |
| 「エンテロトキシンは加熱により分解される」 | 熱に強い。加熱では防げない |
| 「ノロウイルスは夏季に多く、主に食肉を介する」 | 冬季に多発。手指・食品を介した経口感染 |
対比表で総まとめ
最後に、持ち帰り用の1枚。ここまでの登場人物を並べると、試験で問われる論点はほぼこの表に収まる。
| 原因 | 分類 | キーワード |
|---|---|---|
| サルモネラ菌 | 感染型 | 鶏卵・食肉。菌そのものが原因 |
| 腸炎ビブリオ | 感染型 | 海水にすむ好塩性。魚介の生食 |
| カンピロバクター | 感染型 | 鶏肉など |
| 黄色ブドウ球菌 | 毒素型 | エンテロトキシンは熱に強い |
| ボツリヌス菌 | 毒素型 | 神経毒・致死率が高い。缶詰・真空パック |
| O-157・O-111 | 感染型(生体内毒素型) | 腸管出血性大腸菌。ベロ毒素。75℃・1分以上の加熱で予防 |
| ノロウイルス | ウイルス | 冬に多発・ヒトの腸管内で増殖・塩素系で消毒 |
覚え方のコツは、全部を平等に暗記しないこと。「試験に出る毒素型は、まずブドウ球菌とボツリヌスの2つ」と例外側で固定すれば、サルモネラや腸炎ビブリオは自然と感染型に寄せられる。あとは「熱に強い毒素」「海水の菌」「冬のウイルス」という3つの異名を口ずさめれば、本番のこの1問はもう取れたも同然だ。