「労働生理って、医学の勉強をしたことがなくても大丈夫?」——心配いらない。労働生理は3科目の中でいちばん出題パターンが安定している科目だ。法改正の影響を受けず、出るテーマもほぼ固定。つまり一度固めれば、本番まで得点源であり続ける。今回は、その中でも毎回のように顔を出すテーマを、ひっかけの型ごと一気に整理する。
心臓と血液循環——「左から出て全身へ、右から出て肺へ」
血液の流れは2つの輪でできている。体循環は「左心室→大動脈→全身→大静脈→右心房」。肺循環は「右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房」。まずこの向きを口で言えるようにする。 ひっかけの主戦場は動脈血と静脈血だ。動脈=動脈血とは限らない。肺動脈には静脈血(二酸化炭素の多い血)が、肺静脈には動脈血(酸素の多い血)が流れる。血管の名前は「心臓から出る側=動脈」と付いているだけで、中身の血とは別の話。もうひとつ、心臓の拍動のリズムは大脳の指令ではなく、右心房にある洞結節が自動的に作り、自律神経がその速さを調節している。
呼吸——中枢は延髄、動かすのは呼吸筋
肺は自分の筋肉では動けない。横隔膜や肋間筋(呼吸筋)が収縮・弛緩して胸腔の容積を変え、肺は受動的に膨らみ縮む。呼吸中枢は延髄にあり、「大脳皮質」と差し替えるのが定番のひっかけだ。呼吸を促進するスイッチも要注意で、血液中の二酸化炭素の濃度が高くなると呼吸中枢が刺激されて呼吸が速く深くなる。「酸素濃度が高くなると促進される」は誤り。用語は外呼吸=肺(肺胞)でのガス交換、内呼吸=組織でのガス交換。成人の安静時の呼吸数はおよそ1分間に16〜18回で、「60回」のような極端な数字が出たら誤りだ。
肝臓と腎臓——「化学工場」と「ろ過装置」
肝臓は体内の化学工場だ。試験に出る働きは4つ。①グリコーゲンの合成・貯蔵、②アルブミンなど血漿タンパク質の合成、③解毒(有害物質を分解し、アンモニアを尿素に変える)、④胆汁の生成(脂肪の消化を助ける)。狙われるのは「肝臓はインスリンを分泌する」という誤り——インスリンは膵臓から分泌される。 腎臓はろ過装置。血液はまず糸球体でろ過されて原尿になるが、タンパク質と血球はろ過されない。原尿中の水分やグルコース(ぶどう糖)は尿細管で血液中に再吸収され、残りが尿になる。「原尿はそのまま全て尿として排出される」「健康な人でもタンパク質が尿に多量に出る」は、どちらも誤りだ。
ホルモンは代表を表で固定する
| ホルモン | 内分泌器官 | はたらき |
|---|---|---|
| インスリン | 膵臓 | 血糖量の減少 |
| アドレナリン | 副腎髄質 | 血糖量の増加・心拍数の増加 |
| コルチゾール | 副腎皮質 | 血糖量の増加 |
| アルドステロン | 副腎皮質 | 体液中の塩類バランスの調節 |
| パラソルモン | 副甲状腺 | カルシウムの調節 |
| メラトニン | 松果体 | 睡眠の調節 |
出題はほぼ「組合せとして誤っているものはどれか」の形。狙われるのは器官の差し替え(パラソルモンを副腎と組ませる等)とはたらきの逆転(インスリンを血糖増加にする等)だ。「血糖を下げる代表はインスリン、上げる側はアドレナリン・コルチゾール」と、向きで整理しておくと逆転系に強くなる。
体温調節——中枢は視床下部
体温調節の中枢は間脳の視床下部にある。寒いときは皮膚の血管が収縮して体表面の血流を減らし、放熱を抑える。暑いときは血管が拡張し、発汗で熱を逃がす。「寒冷にさらされると皮膚の血管が拡張する」と逆向きに書くのが定番のひっかけだ。外部環境が変化しても体内の状態を一定に保とうとする性質は恒常性(ホメオスタシス)——これを「順応」と差し替えてくる。また、発汗していなくても皮膚や呼気から水分が蒸発する不感蒸泄があり、これも放熱に寄与している。「無視できる」ではない。
暗記のコツは「対」で持つこと 労働生理のひっかけは、ほぼすべて「対になる言葉の入れ替え」でできている。左心室と右心房、延髄と大脳、髄質と皮質、収縮と拡張。覚えるときから対の両方をセットで持ち、「どっちがどっちか」を自問する形にしておくと、本番の選択肢がそのまま解ける。
ひっかけ総ざらい
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 「肺動脈には動脈血が流れる」 | 肺動脈は静脈血。名前と中身は別 |
| 「拍動のリズムは大脳が決める」 | 右心房の洞結節が作り、自律神経が調節 |
| 「呼吸中枢は大脳皮質にある」 | 延髄にある |
| 「酸素濃度が上がると呼吸促進」 | 促進するのは二酸化炭素濃度の上昇 |
| 「肝臓がインスリンを分泌する」 | インスリンは膵臓 |
| 「タンパク質は糸球体でろ過される」 | タンパク質と血球はろ過されない |
| 「体温調節の恒常性を順応という」 | 恒常性(ホメオスタシス)。中枢は視床下部 |
労働生理は、覚える量こそあるが「出るところが動かない」科目だ。ここに並べたテーマを対比で固めてから過去問を回せば、本番のこの科目は安定した得点源になる。