作業環境測定士(第二種)の令和7年度の合格率は14.3%。数字だけ見ると身構えるが、この試験の勉強法は実はかなり素直に決まる。理由は合格基準が「科目ごとに60%以上」だからだ。総合点で競う試験なら得意科目を伸ばす作戦が成り立つが、この試験ではそれが通用しない。この記事では、その制約から逆算した4科目の攻め方の順番と、公表問題・公式テキストの使い方を整理する。

戦略を決めるのは「科目ごとに60%」という合格基準

第二種の試験は共通4科目、各20問・60分・五肢択一のマークシートだ。

科目問題数時間合格に必要な正解数
労働衛生一般20問60分12問以上
労働衛生関係法令20問60分12問以上
作業環境について行うデザイン・サンプリング20問60分12問以上
作業環境について行う分析に関する概論20問60分12問以上

合否は科目ごとに見る。法令で20問取っても、分析概論が11問なら不合格。逆に言えば、全科目12問ずつ、合計48問で受かる。80問中48問——6割の問題を取ればいいのだが、その6割を4科目に均等に配らなければならない

ここから導かれる勉強の原則は1つ。最も強い科目ではなく、最も弱い科目を見る。模試や公表問題を解いたとき、合計点ではなく「12問を割っている科目はどれか」だけをチェックする。その科目に時間を寄せる。これを繰り返すのが、この試験の勉強のすべてと言ってもいい。

4科目の性格と対策の順番

4科目は性格が2つに割れる。暗記で固まる科目(法令・衛生一般)と、計算と実務知識が要る科目(デザイン・サンプリング・分析概論)だ。

順番科目出題の性格対策の主軸
1労働衛生関係法令労働安全衛生法・作業環境測定法の条文と数字暗記。頻度・保存年数・資格要件を表で固める
2労働衛生一般有害物質の健康影響、労働衛生管理の考え方暗記。物質と症状・管理の対応を紐づける
3デザイン・サンプリング測定点の取り方、捕集方法、評価計算測定基準の数字を覚えたうえで計算を手で解く
4分析概論濃度の単位換算、検量線、機器分析の原理換算を手で解く。機器は原理と対象物質のセット

暗記科目を先に固める理由は2つある。1つは、短期間で12問に乗せやすいから。もう1つは、法令と衛生一般の知識が、あとの2科目の土台になるからだ。デザイン・サンプリングでは「どの作業場をどの頻度で測るか」「測定結果をどう評価するか」が前提になるし、分析概論でも「何を何のために測るか」が分かっていないと問題文が読めない。

ステップ1:法令と衛生一般を暗記で先に固める

関係法令は、条文そのものより「数字」と「誰が・何を・いつまで」が問われる。測定の頻度、記録の保存年数、指定作業場の範囲、作業環境測定士と測定機関の位置づけ。衛生管理者試験を受けたことがある人なら、労働安全衛生法まわりは既知の範囲が多い。作業環境測定法の部分だけを重点的に上乗せすればいい。

労働衛生一般は、有害物質と健康影響、ばく露の経路、労働衛生の3管理(作業環境管理・作業管理・健康管理)といった枠組みが軸。「この物質はこの症状」「この対策はこの管理」という対応表を作りながら覚えると、五肢択一で選択肢を消せるようになる。

この2科目は、公表問題を解いて12問に届かなければ、テキストの該当箇所に戻って覚え直す、の繰り返しで伸びる。

ステップ2:デザイン・サンプリングは「測定基準の数字」と「評価計算」

ここが第二種の山場だ。内容は大きく3つ。

  • デザイン:単位作業場所の決め方、A測定の測定点の取り方、B測定を行う位置、測定時刻の考え方
  • サンプリング:捕集器具の種類と対象物質、流量と時間、試料の取り扱い
  • 評価:測定値から管理区分を決める計算

暗記でカバーできるのはデザインとサンプリングまで。評価計算は、作業環境評価基準の考え方(平均的な分布を見るA測定と、最高濃度を見るB測定の結果を、管理濃度と照らして第一〜第三管理区分に振り分ける)を理解したうえで、実際に数字を入れて手で解くしかない。公式を眺めて分かった気になるのが一番危ない。公表問題の計算問題を、解説を見ずに自力で最後まで解けるかで確認する。

ステップ3:分析概論は「換算」と「機器の原理」

分析概論は、化学の基礎がある人とない人で必要な時間が大きく変わる科目だ。柱は2つ。

  • 換算と計算:気中濃度の単位(ppmとmg/m³)の換算、希釈や検量線からの定量。ここは手を動かせば必ず点になる
  • 機器分析の原理:どの機器がどの原理で、どの物質に向くか。機器の名前だけでなく「何を検出しているか」を1行で言えるようにする

第二種の業務範囲は簡易測定機器による分析までだが、試験の分析概論は機器分析の原理まで問われる。細部に深入りするより、代表的な機器の原理と対象物質の対応を確実にする方が12問に届く。

公表問題2回分の使い方

安全衛生技術試験協会は、直近2回分の問題PDFと正答を公開している(https://www.exam.or.jp/emkohyo/)。これが唯一の一次情報なので、使い方を決めておく。

  1. 最初に1回分を時間を計って解く。目的は点数ではなく「12問を割る科目」を見つけること
  2. 割った科目にテキストを集中投入する
  3. 2回目の公表問題を、仕上げの確認に取っておく。2回分しかないので、両方を最初に消費しない
  4. 間違えた問題は「知識が無かった」「計算を間違えた」「問題文の読み違い」のどれかに分類する。計算ミスと読み違いは、本番でも同じことをするので、最も優先して潰す

2回分は量として多くない。だから同じ問題を選択肢ごとに潰す。正解の肢だけでなく、誤りの肢が「どこをどう変えれば正しくなるか」まで言えるようにすると、2回分で5倍の練習量になる。

公式テキストの位置づけ

日本作業環境測定協会が科目ごとのテキストを出している(『作業環境測定のための労働衛生一般』『同 労働衛生関係法令』『同 デザイン・サンプリングの実務』『同 分析概論』など。販売は https://jawe-book.com/ )。試験の出題範囲と対応した構成になっているので、「12問を割った科目の該当章に戻る」ための辞書として使う。最初から通読しようとすると、暗記科目に時間を取られて計算科目が手薄になりやすい。

同協会は受験準備講習(東京会場+Zoom)も実施している。独学で計算科目の理解が進まない人は、そこで「解き方」を見るのが早い。

直前期の点検

最後の1〜2週間は、新しいことを覚えるより「4科目すべてで12問に届くか」の点検に使う。

  • 公表問題の2回分を科目ごとに解き直し、最低点の科目を確認する
  • 計算問題は、電卓を使わず筆算で最後まで解ききる練習をしておく
  • 法令の数字(頻度・保存年数)と、評価基準の数字は、一覧にして前日に見返す

「得意科目で貯金」は存在しない 総合点の試験なら法令で満点を取って分析概論の不足を補える。この試験にその貯金は無い。法令が20問でも分析概論が11問なら落ちる。直前期に得意科目を磨く時間は、そのまま合否に効かない時間だ。

まとめ

作業環境測定士(第二種)の勉強法は、①合格基準が科目ごとに60%なので最も弱い科目を常に見る、②法令と衛生一般を暗記で先に12問へ、③デザイン・サンプリングは測定基準の数字と評価計算を手で解く、④分析概論は単位換算と機器の原理、⑤公表問題2回分は1回目で弱点発見・2回目で仕上げ、⑥公式テキストは弱点の章に戻る辞書——この順番で進めれば、14.3%という数字は「4科目の穴を塞いだ人の割合」に見えてくる。

科目別の演習は受かるAIの作業環境測定士コース(/c/sakkan)で。弱い科目から回してほしい。

参考