「第二種は基礎だから受かりやすい」——作業環境測定士を調べ始めた人が最初に持つ印象は、たいていこれだ。ところが数字を見ると話が逆になる。令和7年度の第二種の合格率は14.3%。第一種の46.3%より、はるかに低い。なぜ「基礎」のほうが落ちるのか。この記事では合格率の推移を並べ、急落の理由として考えられること、そこから逆算した対策までを整理する。

合格率の推移——第二種は6年で41%から14%へ

安全衛生技術試験協会が公表している令和7年度の結果と、民間集計による過去分を並べる。

年度第一種第二種
2019年72.3%41.0%
2020年61.4%43.3%
2021年69.0%35.8%
2022年66.4%42.0%
2023年55.9%25.8%
2024年58.4%15.8%
令和7年度(2025年)46.3%(受験953人・合格441人)14.3%(受験1,832人・合格262人)

※協会サイトに掲載されるのは直近1年分のみ。2024年以前は民間の集計値。

第二種は2022年までは4割前後で安定していたのが、2023年に25.8%、2024年に15.8%、令和7年度に14.3%と、3年で3分の1になった。一方で受験者は1,832人と、第一種(953人)の約2倍いる。受験者が増える一方で合格率が急落している、という構図だ。

第一種も72.3%から46.3%まで下がってはいるが、それでも第二種の3倍以上ある。

なぜ第二種だけがここまで落ちたのか

協会は理由を公表していない。ここから先は、制度の仕組みと受験者構成から考えられることとして読んでほしい。

理由1:合格基準が「科目ごとに60%」

作業環境測定士試験の合格基準は、総合点ではなく科目ごとに60%以上だ。第二種は共通4科目——労働衛生一般/労働衛生関係法令/作業環境について行うデザイン・サンプリング/作業環境について行う分析に関する概論——を全部受けるので、各科目20問中12問を4科目すべてでクリアしなければならない。

これが効く。3科目で18問ずつ取っても、残り1科目が11問なら不合格。得意科目で稼いで苦手科目をカバーする、という一般的な試験の戦略が通用しない。4科目の中に1つでも穴があれば落ちる構造なので、科目の性格がばらばら(暗記系2科目+計算・実務系2科目)なほど、どこかで足切りに引っかかる確率が上がる。

理由2:受験者層の変化(推定)

第二種の受験者はこの数年で大きく増えている。受験者が増えたぶん、実務経験の浅い層や、免除を使わず4科目すべてで臨む層の比率が上がったと考えられる。

逆に第一種の合格率が相対的に高いのは、環境計量士(濃度関係)のように共通科目が免除される人や、第二種をすでに持っていて選択科目だけを受ける人が多いためと考えられる。つまり第一種の46.3%は「共通4科目+選択科目を全部解いた人の合格率」ではなく、「主に選択科目だけを受けた人」が押し上げている可能性が高い。

これらは公表データからの推定で、確定した理由ではない。ただ、「科目ごとの足切り」は制度としての事実なので、対策はここから逆算するのが確実だ。

第一種と第二種、難しさの質が違う

第二種第一種
受ける科目共通4科目共通4科目+選択科目(有機溶剤/鉱物性粉じん/特定化学物質/金属類/放射性物質から1つ以上)
できる業務デザイン・サンプリングと、簡易測定機器による分析第二種の業務に加えて、登録した種類の分析
令和7年度合格率14.3%46.3%
手数料11,800円13,900円(共通+選択1科目)。選択科目が1つ増えるごとに+3,300円

第二種の難しさは「性格の違う4科目を同時に60%に乗せること」。第一種の難しさは「選択科目の分析化学(機器分析の原理、定量の計算)」で、質が違う。第二種を持っている人が第一種を受けるときは選択科目だけになるので、分析化学に集中できる。

勉強時間は「人による」としか言えない

「○○時間で合格」という数字を探している人も多いと思うが、根拠のある統計は存在しない。作業環境測定士は原則として受験資格に労働衛生の実務経験が要る試験で、受験者の前提知識が大きく違う。測定機関で日常的にサンプリングをしている人と、事業場の衛生管理者として法令だけ詳しい人とでは、必要な時間がまったく違う。だからここでは時間ではなく、科目の性質から見て、どこに時間がかかるかを書く。

科目の性質から見た難所

暗記で固まる2科目:労働衛生一般・労働衛生関係法令

労働衛生一般は有害物質の健康影響や労働衛生管理の考え方、関係法令は労働安全衛生法と作業環境測定法の条文がベース。衛生管理者試験を経験した人には見慣れた内容で、暗記で60%に届きやすい。

計算と実務知識が要る2科目:デザイン・サンプリング、分析概論

第二種の合否を分けるのは、まずこの2科目と考えられる。

  • デザイン・サンプリング:単位作業場所の設定、A測定・B測定の測定点の取り方、サンプリングの方法(捕集器具・流量・時間)、そして測定結果から管理区分を決める評価計算。作業環境評価基準の数字を覚えたうえで、計算問題を解く。
  • 分析概論:濃度の単位換算、検量線、機器分析の原理。化学の基礎が抜けていると、暗記だけでは埋まらない。

暗記系2科目で稼いでも、この2科目のどちらかで11問以下なら不合格。「計算が苦手だから法令で稼ぐ」という逃げ道が、この試験には無い。

「難しい問題が多い」のではなく「穴が許されない」 合格率14.3%と聞くと、超難問が並ぶ試験を想像しがちだ。だが構造上の本質は、4科目のうち最も弱い科目で合否が決まること。最も強い科目ではなく、最も弱い科目を見るのがこの試験の見方だ。

対策の方針

  1. 4科目を均等に60%へ乗せる。得意科目を伸ばすより、最低点の科目を上げる方が合否に直結する
  2. 公表問題2回分(安全衛生技術試験協会が公開している直近2回分の問題と正答)で、科目ごとの出題の型を先につかむ
  3. 計算問題は手を動かして解く。評価計算と単位換算は、公式を見ただけでは本番で出てこない

科目別の具体的な進め方は、勉強法の記事「作業環境測定士(第二種)の勉強法」で扱う。

まとめ

第二種の14.3%は「問題が異常に難しい」からではなく、科目ごとの60%足切りという制度と、**受験者層の変化(推定)**が重なった結果と考えられる。裏を返せば、4科目のどれも捨てずに60%ずつ積み上げれば、合格は競争ではなく絶対評価で決まる。低い合格率に怯えるより、自分の一番弱い科目を先に見つけること——それがこの試験の出発点だ。

参考