「ストレスチェックの結果って、会社に筒抜けなんでしょ?」——よく聞く不安だが、制度は逆の設計になっている。結果は本人にだけ届き、本人の同意がなければ事業者には渡らない。衛生管理者試験でも、ストレスチェックは「プライバシー保護」を軸に数字と手続を問う定番分野だ。あわせて出る長時間労働者の面接指導は、80時間と100時間の使い分けが急所。この2つを1本で固める。

ストレスチェックの基本——50人以上・1年以内ごとに1回

ストレスチェック(心理的な負担の程度を把握するための検査)は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で、1年以内ごとに1回、定期に実施する義務がある。常時50人未満の事業場は当分の間、努力義務だ(なお2025年成立の改正法で50人未満への義務拡大が決まっており、施行後は全事業場が対象になる)。「100人以上の事業場に義務」とする肢は誤り。 調査票には、①仕事のストレス要因、②心身のストレス反応、③周囲のサポート——の3つの領域に関する項目を含める。実施した事業者(常時50人以上)は、検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

誰が実施できるか——医師・保健師に「研修を受けた」看護師等が加わる

ストレスチェックの実施者になれるのは、医師・保健師、そして厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師だ。「必ず産業医が実施しなければならない」は誤りである。 もうひとつ大事なのが、検査を受ける労働者について解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならないというルールだ。人事権者が結果を見られる仕組みでは、正直に答えられないからである。

結果は本人へ——事業者への提供には本人の同意が必要

検査の結果は、実施者から直接本人に通知する。そして本人の同意なく事業者に提供してはならない。「実施者から事業者に通知される」「事業者が全員の結果を把握して管理する」といった肢は誤りだ。本人の同意を得て事業者が結果を受け取った場合、その記録は5年間保存する。

論点正しい内容
義務の規模常時50人以上(50人未満は努力義務)
頻度1年以内ごとに1回
実施者医師・保健師、研修修了の歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師
結果の通知実施者から本人へ直接。事業者への提供は本人同意が必要
面接指導高ストレス者の申出により医師が実施
記録面接指導の結果の記録は5年間保存

高ストレス者の面接指導——「申出」が要件

検査の結果、高ストレスと評価され、実施者が面接指導を受ける必要があると認めた労働者申し出たときは、事業者は医師による面接指導を行わなければならない。「申出の有無にかかわらず行う」は誤りで、申出が要件だ。申出を理由に労働者に不利益な取扱いをしてはならない。 面接指導を行ったら、結果の記録を作成して5年間保存し、就業上の措置について遅滞なく医師の意見を聴く

長時間労働者の面接指導——80時間と100時間を入れ替えさせない

ストレスチェックとは別枠で、長時間労働者に対する医師の面接指導がある。要件は時間外・休日労働が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者申し出たとき。 ここに例外がある。研究開発業務に従事する者は、時間外・休日労働が1月当たり100時間を超えたら、本人の申出がなくても面接指導を行わなければならない。高度プロフェッショナル制度の対象者も、健康管理時間のうち1週40時間を超えた分が月100時間超に達したら申出不要で実施する。

対象時間の要件申出
一般の労働者時間外・休日労働が月80時間超+疲労の蓄積必要
研究開発業務の従事者時間外・休日労働が月100時間超不要
高度プロフェッショナル制度の対象者健康管理時間の週40時間超過分が月100時間超不要

「45時間を超えた全員に行う」という肢も出るが、45時間は36協定の限度時間(月45時間・年360時間)の数字であり、面接指導の要件ではない。面接指導を行うのは医師であって衛生管理者ではなく、結果の記録は作成して5年間保存する——ストレスチェックの面接指導と共通のルールだ。

なぜ80時間なのか 80時間は、脳・心臓疾患の労災認定基準(発症前1か月におおむね100時間、または2〜6か月間平均で月おおむね80時間を超える時間外労働)と連動した、いわゆる「過労死ライン」だ。80時間は「そこに達する前に医師が介入する」線、100時間は「申出を待っていられない」線と理解すると、数字の意味が腑に落ちる。

ひっかけ総ざらい

出題パターン正しい理解
「ストレスチェックは常時100人以上の事業場に義務」常時50人以上。50人未満は努力義務
「結果は実施者から事業者に本人の同意なく通知される」本人に直接通知。事業者提供は本人同意が必要
「ストレスチェックは必ず産業医が実施する」医師・保健師・研修修了の看護師等でよい
「高ストレス者には申出の有無にかかわらず面接指導」申出が要件
「時間外・休日労働が月45時間を超えた全員に面接指導」月80時間超+疲労蓄積+申出。45時間は36協定の限度時間
「面接指導は衛生管理者が行う」「記録は不要」医師が行い、記録は5年間保存

まとめ:「50・1・同意・申出」と「80と100」

ストレスチェックは、①常時50人以上で1年以内ごとに1回、②実施者は医師・保健師+研修修了の看護師等、③結果は本人に直接、事業者には同意がなければ渡さない、④高ストレス者は申出で医師の面接指導、⑤記録は5年保存。長時間労働の面接指導は、⑥一般は80時間超+疲労蓄積+申出、⑦研究開発業務は100時間超で申出不要。「誰の同意か」「申出は要るか」「80か100か」を選択肢ごとに確認する癖をつけよう。