利息10円の世界から抜け出す
100万円を、金利0.001%の普通預金に1年間預けたとする。ついてくる利息は——10円。自販機の水も買えない。
「銀行に預けておけば安心」は間違いじゃない。でも「増える」かというと、今の日本ではほぼゼロだ。ここで多くの人が思う。「じゃあどうすればお金は増えるの?」その答えの入口になるのが、FP試験でも必ず出てくる金融資産運用の考え方だ。難しい計算式より先に、「増える仕組み」の正体を押さえよう。
複利は、時間があなたの代わりに働く
利息の付き方には2種類ある。
- 単利:最初の元本にだけ利息がつく
- 複利:利息にもさらに利息がつく(利息が元本に組み込まれていく)
100万円を年3%で運用した場合を比べてみる。
| 単利 | 複利 | |
|---|---|---|
| 10年後 | 130万円 | 約134万円 |
| 20年後 | 160万円 | 約181万円 |
| 30年後 | 190万円 | 約243万円 |
最初の差はわずか4万円。でも30年後には50万円以上開く。これが「雪だるま」とよく例えられる理由だ。転がる時間が長いほど、雪だるまは加速度的に大きくなる。
100万円を年3%で運用すると(単利 vs 複利)
72の法則 お金が2倍になる年数は、ざっくり「72 ÷ 金利(%)」で計算できる。年3%なら72÷3=24年で2倍。年6%なら12年。電卓いらずでスピード感がつかめる、投資家の暗算術だ。
複利のいちばんの燃料は時間。だから「若いうちから少しでも早く」と言われる。20代で始めた1万円と、40代で始めた1万円は、増え方の土俵がまるで違う。
リスクとリターンは、コインの裏表
「リスク」と聞くと「危険・損」を思い浮かべるけれど、投資の世界では意味が少し違う。投資でいうリスク=結果のブレ幅のこと。値上がりも値下がりも、両方まとめて「ブレ」と呼ぶ。専門的にはこのブレの大きさを標準偏差という数字で測る。
- ブレが小さい(標準偏差が小さい)= リスクが低い = 大きく増えも減りもしない
- ブレが大きい(標準偏差が大きい)= リスクが高い = 大化けも大損もありうる
そして大事なのが、大きく増える可能性(リターン)と大きく減る可能性(リスク)は必ずセットだということ。「ローリスク・ハイリターン」の商品はこの世に存在しない。もしそう謳う話があれば、それは詐欺を疑っていい。
リスクとリターンは比例する
卵は、一つのカゴに盛るな
じゃあリスクが怖いから預金だけ、では最初の「利息10円」に逆戻りだ。そこで登場するのが分散投資。有名な格言がある。「卵を一つのカゴに盛るな」。全部同じカゴに入れておくと、落としたら全部割れる。いくつかのカゴに分けておけば、一つ落としても他は無事だ。分散には3つの方向がある。
- 資産の分散:株・債券・不動産など、値動きのクセが違うものを組み合わせる
- 地域の分散:日本だけでなく、米国・欧州・新興国にも散らす
- 時間の分散:一度に買わず、毎月コツコツ買う(=積立)
特に時間の分散は効果が大きい。毎月同じ金額を買い続けると、価格が高いときは少なく、安いときは多く買える。結果として平均購入単価がならされる。これをドルコスト平均法という。「買うタイミングで悩まなくていい」のが初心者の最大メリットだ。ただし万能ではなく、ずっと上がり続ける相場なら一括投資に負けることもある。
主要4商品を「リスクの低い順」に並べる
FPで問われる基本の4つを、性格ごとに整理しておこう。
| 商品 | リスク/リターン | ざっくりした性格 |
|---|---|---|
| 預金 | 低い | 元本が守られる代わりにほぼ増えない。生活防衛資金の置き場 |
| 債券 | やや低い | 国や企業への「貸付」。満期まで持てば利息+元本が基本戻る |
| 投資信託 | 中〜高 | 詰め合わせパック。多数の銘柄に分散運用。1本で分散が効く |
| 株式 | 高い | 会社のオーナー権。値上がり益・配当が狙えるが値動きは激しい |
投資信託が初心者に勧められるのは、1本買うだけで自動的に分散が効くから。ただしそのリスクは中身しだい——債券中心なら低め、株式中心なら株式並みに振れる点は覚えておきたい。
新NISA——増えた利益に税金がかからない
通常、投資で得た利益には約20%(正確には20.315%)の税金がかかる。10万円儲けても手元に残るのは約8万円。この税金がまるごとゼロになるのがNISAだ。2024年から制度が大きく変わり、使い勝手が跳ね上がった。
- つみたて投資枠:年間120万円まで。長期の積立向け商品が対象
- 成長投資枠:年間240万円まで。個別株なども買える
- 2つ併用OKで、年間最大360万円まで投資できる
- 生涯で非課税にできる上限は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
- 非課税期間は無期限。売却すれば翌年、その枠が復活して再利用できる
生涯 非課税枠 1,800万円
注意点:NISAは損失に冷たい NISA口座での損失は、他の口座の利益と相殺(損益通算)できず、翌年以降への繰越控除もできない。「利益が非課税」の裏で「損は救済されない」——この非対称さがFPでよく問われる。
FP3級で狙われる引っかけ
- 単利と複利:計算問題では「元本にだけ」か「利息にも」かを取り違えさせてくる
- リスクの意味:標準偏差が大きい=リスクが大きい(危険という意味ではなくブレの大小)
- 分散の効果:値動きが似たもの同士では分散にならない。値動きの異なるものを組み合わせてこそ効く
- NISAの枠:年間360万円・生涯1,800万円・成長枠は1,200万円まで。数字がそのまま出る
- NISAと損益通算:「できる」と書いてあったらバツ。損益通算・繰越控除はできない
まとめ:怖いのは「知らないまま放置すること」
投資が怖いのは、たいてい仕組みを知らないからだ。複利で時間を味方につけ、リスクとリターンはセットだと理解し、分散でブレをならし、NISAで税金を味方につける。この4つが分かれば、「利息10円」の世界からは確実に一歩踏み出せる。大きく賭ける必要はない。月1万円の積立でも、始めた瞬間からあなたのお金は働き始める。