給料、株の配当、アパートの家賃、退職金——ぜんぶ同じ「もうけ」なのに、所得税はこれをひとまとめにしない。わざわざ10種類に仕分けして、課税方法や税率のかけ方まで変える。面倒に見えるけれど、この仕分けの地図を頭に入れると、FP3級の税金分野はグッと軽くなる。そして地図の目的地はいつも同じ、「損益通算」——ある所得の赤字を、他の所得の黒字で相殺できるかどうか、だ。
まず、所得は性質で10種類に分かれる
所得税は、もうけを**得た理由(性質)**で10種類に分類する。同じ「10万円のもうけ」でも、毎月の給料か、たまたま当たった懸賞かで、担税力(税を負担する体力)が違うと考えるからだ。分け方はざっくり4グループ。①働いて得る=給与所得・事業所得、②資産に働かせて得る=利子所得・配当所得・不動産所得、③資産を手放して得る=譲渡所得・山林所得、④臨時やその他=退職所得・一時所得・雑所得。公的年金や副業の原稿料など「どこにも入らないもうけ」はすべて雑所得に落ちる、という点も押さえておきたい。まずは全体像を一望しよう。
所得税は所得を10種類に仕分けする
① 働いて得る
- 給与所得
- 事業所得
② 資産に働かせて得る
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
③ 資産を手放して得る
- 譲渡所得
- 山林所得
④ 臨時・その他
- 退職所得
- 一時所得
- 雑所得
損益通算=赤字を黒字で相殺する
どれかの所得が赤字(損失)になったとき、その赤字を他の所得の黒字から差し引けるのが損益通算だ。たとえば事業で50万円の赤字が出て、給与所得が400万円あるなら、通算して350万円に対して税金を計算できる。払う税が減るありがたい制度だが、全部が全部通算できるわけではない。赤字を"持ち出せる"のは原則4つの所得だけ。頭文字をつないで「富士山上(フ・ジ・サン・ジョウ)」と覚える。フ=不動産所得、ジ=事業所得、サン=山林所得、ジョウ=譲渡所得。逆にいえば、利子・配当・給与・退職・一時・雑の赤字は、他の黒字と相殺できない(そもそも赤字になりにくいものも多い)。試験ではまず、この4つを即答できるかが問われる。
フ・ジ・サン・ジョウ=損益通算できる4所得
フ
不動産所得
ジ
事業所得
サン
山林所得
ジョウ
譲渡所得
通算できない代表例:一時所得・雑所得の赤字/配当・給与の損失/株式の譲渡損を給与と相殺
ただし「通算できない赤字」がある
富士山上の4つでも、中身によっては通算がブロックされる。よく出るのは次の3つだ。
- 不動産所得の損失のうち、土地取得のための借入金利子にあたる部分は通算できない(建物分の利子はOK)
- 別荘・ゴルフ会員権など生活に通常必要でない資産の譲渡損失は通算できない
- 株式等の譲渡損失は給与など他の所得と相殺できない(申告分離課税を選んだ上場株式等の配当や譲渡益の範囲内のみ通算でき、損失は翌年以降3年繰越)
「4所得ならなんでもOK」ではなく、こうした例外があるのがFP3の引っかけどころ。特に土地の借入金利子とゴルフ会員権は頻出なので、キーワードで反応できるようにしておこう。
合算する箱と、別枠の箱
損益通算とセットで問われるのが課税方法だ。多くの所得はまとめて一つの金額にし、累進税率をかける総合課税。一方、一部の所得は他と合算せず別に計算する分離課税になる。代表は退職所得と山林所得、それに土地建物や株式の譲渡所得。退職金は長年の勤労の対価が一度に入るお金で、これを給与と合算すると累進税率で一気に高い税率がかかって酷なので、あえて別枠(=分離)にして負担を抑えている。山林所得も長い年月で育てた木を一度に売るため、同じ発想で分離課税だ。なお山林所得は分離課税だけれど損益通算はできる(富士山上の"サン")——ここは混同しやすい要注意ポイント。
総合課税
合算して1つの税率
- 利子(一部)
- 配当
- 不動産
- 事業
- 給与
- 譲渡(総合)
- 一時
- 雑
分離課税
別枠で計算
- 退職
- 山林
- 譲渡(土地建物)
- 譲渡(株式)
- 利子(源泉分離)
FP3でここが問われる
| 引っかけ | 正しい理解 |
|---|---|
| 損益通算できる所得は? | 不動産・事業・譲渡・山林の4つ(富士山上)だけ |
| 一時所得・雑所得の赤字は通算できる? | できない。雑所得の損失は「なかったもの」とされる |
| 給与所得の赤字を他と通算できる? | 給与は黒字の受け皿にはなるが、給与自体は赤字にならない |
| 退職所得・山林所得は総合課税? | 分離課税。他の所得と合算しない(山林は通算はできる) |
| 株の譲渡損を給与と相殺できる? | できない。申告分離の株式等のもうけの範囲内だけ |
まとめ
所得は性質で10種類、赤字を持ち出せるのは富士山上(不動産・事業・譲渡・山林)の4つだけ、そして土地の借入金利子・生活に必要でない資産・株式の損失という例外がある。ここに総合課税と分離課税の線引きを重ねれば、税金分野の骨格は完成だ。語呂ひとつで得点源に変わる——それが損益通算だ。