「粉じんを吸うと肺が悪くなる」——それだけなら誰でも知っている。試験で問われるのは、じん肺は治らない・止まらないという性質と、合併症の顔ぶれ、そして粉じん則の数字だ。この3つは出題の型が決まっていて、型を知れば誤りの肢が浮いて見える。

じん肺の本質——線維化・不可逆・進行性

じん肺は、粉じんを長期間吸入することで肺の組織に線維増殖性変化(線維化)が起こる疾病だ。いったん線維化した組織は元に戻らない(不可逆)。しかも、粉じんへのばく露をやめた後も病変が進行することがある。 だから誤りの肢は決まって「粉じんの吸入を中止すれば、病変の進行も直ちに停止する」「ばく露を中止すれば、その後は進行することはない」という形で来る。じん肺のキーワードは線維化・不可逆・進行性。「止まる」「治る」と断定する記述を見たら、まず誤りを疑おう。

治せないから「早く見つけて、吸わせない」 じん肺に根本的な治療法はない。だからじん肺法の健康管理は、早期発見と粉じんばく露の低減が中心になる。「治療で元に戻る」前提の記述は、この制度設計と矛盾している——そう読めば、知らない肢でも方向で判断できる。

原因粉じんで名前が変わる——けい肺と石綿肺

じん肺は、原因となる粉じんの種類によって分類される。

じん肺の名称原因粉じん押さえどころ
けい肺遊離けい酸(鉱物性粉じんに含まれる)アルミニウムではない
石綿肺石綿(アスベスト)石綿は肺がん・中皮腫の原因でもある
溶接工肺溶接ヒューム金属のヒュームもじん肺を起こす

ひっかけは原因物質のすり替えで作られる。「けい肺はアルミニウムの粉じんの吸入によって発生する」は誤りで、正しくは遊離けい酸。「石綿の粉じんはじん肺を起こすことはない」も誤りで、石綿はれっきとしたじん肺の原因物質だ。 石綿はさらに、じん肺(石綿肺)だけでなく肺がんや中皮腫といった重篤な遅発性障害の原因にもなる。潜伏期間が極めて長いため、石綿関係の記録(作業環境測定の記録・健康診断個人票)は40年間保存とされ、石綿の粉じんを発散する場所での業務は健康管理手帳の交付対象になっている。

合併症は6つ・管理区分は「数字が大きいほど重い」

じん肺の合併症は、じん肺法施行規則で6つが定められている。肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がんだ。 試験では「じん肺の合併症には、肺結核、続発性気管支炎、原発性肺がんなどがある」という形で正文として出る。全部を完璧に書ける必要はないが、結核系2つ・続発性3つ・肺がん1つという骨組みを持っておくと、知らない病名が混ぜられても判断できる。 もう1つ、じん肺法のじん肺管理区分は、じん肺健康診断の結果に基づいて管理一から管理四に区分される。管理一は所見なし、管理四が最も進行した状態だ。「管理一が最も進行した状態を表す」は向きを逆にした誤り。 関連して、粉じん作業に従事した者のうちじん肺管理区分が管理二又は管理三であった者は、健康管理手帳の交付対象になる。「粉じん作業に従事しただけ」では交付されない——区分の要件つきである点が問われる。

粉じん則の数字——6月・1年・7年・毎日

じん肺を起こさないための対策は、粉じん障害防止規則(粉じん則)で具体的に決まっている。出るのは数字だ。

項目数字
常時特定粉じん作業を行う屋内作業場の粉じん濃度の測定6月以内ごとに1回
測定記録の保存7年間
特定粉じん発生源の局所排気装置の定期自主検査1年以内ごとに1回
粉じん作業を行う屋内作業場所の清掃毎日1回以上
常時特定粉じん作業に従事する労働者への特別の教育必要

狙われるのは保存期間だ。一般の作業環境測定の記録は3年保存だが、粉じんは肺への影響が長期に及ぶため7年。「3年間保存」とする肢が誤りとして実際に出ている。「測定は6月・検査は1年・保存は7年」と3つの数字を独立に覚えよう。 なお、粉じん作業には作業主任者の制度がない。「セメントの袋詰め作業に作業主任者を選任」は誤りで、これも定番のひっかけだ。

保護具は「粒子には防じんマスク」

粉じん・ヒューム・ミストといった粒子状物質には防じんマスクを使う。ただし防じんマスクは粒子をろ過するだけで、ガスや蒸気には効かない(それは防毒マスクの仕事)。また防じんマスク・防毒マスクはいずれもろ過式で酸素を供給しないため、酸素濃度18%未満の場所では使えない。面体と顔面の間にタオルなどを当てて着用するのも、密着を損なうので禁止だ。

ひっかけ総ざらい

出題パターン正しい理解
「粉じんの吸入を中止すれば進行は直ちに停止する」不可逆・進行性。中止後も進行しうる
「けい肺はアルミニウムの粉じんが原因」遊離けい酸が原因
「石綿はじん肺を起こさない」石綿肺を起こし、肺がん・中皮腫の原因にもなる
「管理一が最も進行した状態」管理四が最も重い。管理一は所見なし
「粉じん濃度の測定記録は3年間保存」7年間保存
「防じんマスクはガス・蒸気にも有効」粒子専用。ガス・蒸気は防毒マスク

まとめ:性質→原因→合併症→数字の順で固める

じん肺は、①性質(線維化・不可逆・進行性)、②原因物質(遊離けい酸=けい肺、石綿=石綿肺)、③合併症6つ(結核系2・続発性3・肺がん1)、④管理区分は数字が大きいほど重い、⑤粉じん則の数字(測定6月・検査1年・保存7年・清掃毎日)——この順で固めれば、労働衛生と関係法令の両方でじん肺がらみの1問を取り切れる。