「タンク内で作業員が倒れ、助けに入った同僚も倒れた」——酸素欠乏の労働災害では、この二次災害の構図が繰り返し起きている。衛生管理者試験でも酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)は定番の出題分野で、問われる数字は18%・21%・10ppmのほぼ3つだけ。この記事で定義から対策まで、ひっかけごと固めてしまおう。

酸素欠乏の定義——「18%未満」は安全ラインではない

酸欠則でいう酸素欠乏とは、空気中の酸素濃度が18%未満である状態をいう。通常の空気の酸素濃度は約21%だから、そこから3ポイント下がった状態が、すでに法令上の危険域ということだ。 注意したいのは、18%は「これ以上あれば安全」という保証値ではなく、あくまで定義の線だということ。18%を少し上回っていても、正常な21%より低い空気は明らかに異常で、濃度がさらに下がっていく前兆でもある。実務の発想は「18%ギリギリでよい」ではなく「21%の正常な空気に近づける」だ。試験では18%と21%の入れ替え(「酸素欠乏とは21%未満の状態をいう」等)が定番のひっかけになる。

第一種と第二種——硫化水素が加わるかどうか

酸素欠乏危険作業は2種類に分かれる。分かれ目は硫化水素中毒のおそれがあるかどうかだ。

区分場所の性質測定するもの
第一種酸素欠乏危険作業酸素欠乏症のおそれのある場所酸素濃度
第二種酸素欠乏危険作業酸素欠乏症に加え、硫化水素中毒のおそれもある場所酸素濃度+硫化水素濃度

汚水槽や下水道の内部など、腐敗した有機物から硫化水素が発生しうる場所が第二種の典型だ。第二種の管理のキー数値は硫化水素10ppm(100万分の10)——換気では酸素18%以上、かつ硫化水素10ppm以下に保つ。ひっかけは数字の桁で、「硫化水素の濃度が10%」とやられたら誤り。ppmと%では桁がまったく違う。「第二種では酸素濃度のみを測定すればよい」も誤りで、第二種は両方測る

測定はその日の作業開始前——特別教育もセット

酸素欠乏危険作業では、その日の作業を開始する前に、作業場所の空気中の酸素濃度(第二種では硫化水素濃度も)を測定しなければならない。タンクや槽の中の空気は一晩で状態が変わりうるから、「前日に測った」では意味がないのだ。あわせて、酸素欠乏危険作業に労働者を就かせるときは特別の教育を行う必要がある。

換気の鉄則——純酸素は絶対に使わない

作業中は換気により、酸素濃度18%以上(第二種ではさらに硫化水素10ppm以下)に保つ。ここで最重要のひっかけが「換気には純酸素を用いる」だ。酸素を増やしたいのだから一見合理的に思えるが、純酸素での換気は火災・爆発の危険があるため禁止。換気に使うのは新鮮な空気である。

換気できないときは「給気式」——防毒マスクは役に立たない

爆発や酸化の防止などのため換気できない場合は、送気マスクや空気呼吸器などの給気式呼吸用保護具を使用させる。これを「防毒マスクを使用させる」と書き換えるのが試験の定番だ。防毒マスクや防じんマスクはろ過式——そこにある空気から有害物を取り除くだけで、酸素を供給することはできない。酸素のない場所では役に立たないどころか、着けている安心感のぶんかえって危険ですらある。「酸欠には給気式」を反射で選べるようにしておこう。また、転落のおそれのある場所では墜落制止用器具等の使用も求められる。意識を失えばそのまま墜落するからだ。

なぜ二次災害が多いのか 酸素濃度が著しく低い空気は、一呼吸しただけで意識を失うことがあるほど作用が急激だ。しかも無色無臭で、感覚では危険を察知できない。倒れた人を見て慌てて飛び込んだ救助者が、同じ空気を吸って倒れる——これが二次災害の構図だ。「まず測定・換気、入るなら給気式」という規則の組み立ては、この急激さへの対策そのものと理解しておくと、個々の規定を忘れない。

ひっかけ総ざらい

出題パターン正しい理解
「酸素欠乏とは酸素濃度21%未満の状態」18%未満。21%は通常の空気の濃度
「硫化水素の濃度が10%を超える〜」10ppm。桁違いに注意
「第二種では酸素濃度のみ測定すればよい」酸素+硫化水素の両方を測定
「換気には純酸素を用いることが推奨される」純酸素は火災・爆発の危険があり禁止
「換気できないときは防毒マスクを使用」送気マスク・空気呼吸器等の給気式。ろ過式は酸素を供給できない

まとめ:18%・21%・10ppmと「給気式」で取り切る

酸素欠乏は、①定義は酸素18%未満(通常の空気は約21%)、②第二種=硫化水素中毒のおそれもある作業で、測定も換気目標も酸素+硫化水素(10ppm)、③その日の作業開始前に測定、④換気は新鮮な空気で(純酸素NG)、⑤換気できなければ給気式(防毒マスクNG)——この5点でほぼ出題をカバーできる。数字が少なく整理しやすい、確実に取り切りたい分野だ。