「この対策は3管理のどれ?」——labeling を問う問題は、暗記量のわりに得点効率がいい。コツは、対策そのものを覚えるのではなく、何に手を入れているかで切ることだ。
3管理は「モノ・やり方・ヒト」で切る
労働衛生の基本は作業環境管理・作業管理・健康管理の3つ。これに労働衛生教育と総括管理を加えて5管理と呼ぶこともある。3つの切り分けは、次の一行に集約できる。
- 作業環境管理 = モノ(有害要因そのもの)を減らす・断つ
- 作業管理 = やり方(人の働き方)を変えて、ばく露を減らす
- 健康管理 = ヒト(労働者の体)を見る
「有害物質を減らしているのか、人の動き方を変えているのか、人の体を診ているのか」。この3択で読めば、初見の対策でも振り分けられる。
具体例の振り分け表
| 対策 | 分類 | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 有害物質をより有害性の低い物質に代替する | 作業環境管理 | 有害要因そのものを消している |
| 生産工程を密閉化・自動化する | 作業環境管理 | 人と有害物のあいだを物理的に断つ |
| 局所排気装置を設置する | 作業環境管理 | 発散した有害物を環境から除去する |
| 有害な作業場所を隔離する | 作業環境管理 | 環境そのものを分離している |
| 作業環境測定を行い評価する | 作業環境管理 | 環境の状態を把握する行為 |
| 作業姿勢・作業手順を改善する | 作業管理 | 人のやり方を変えている |
| 作業時間を短縮し、ばく露時間を減らす | 作業管理 | 環境は変わらず、人の当たり方を減らす |
| 保護具(防じんマスク・防毒マスク等)を使用する | 作業管理 | 環境の濃度は下がっていない |
| 健康診断とその事後措置 | 健康管理 | 人の体を見ている |
| 長時間労働者への面接指導 | 健康管理 | 人の状態を確認している |
保護具が「作業管理」なのはなぜか
いちばん狙われるのがここだ。マスクは有害物を防いでいるのだから作業環境管理では、と考えたくなる。だが保護具を着けても、作業場の空気中の濃度は1ミリも下がっていない。変わったのは「その人がどう身を守って作業するか」というやり方だけ。だから作業管理に分類される。
同じ理屈で、作業時間の短縮も作業管理だ。環境は有害なままで、当たる時間を減らしているにすぎない。「環境の濃度が下がったか?」と自問すれば、迷わず切り分けられる。
対策には優先順位がある
3管理を分類問題としてだけ覚えるともったいない。労働衛生対策には順番があり、これも出題される。
- 有害物質の使用中止・より有害性の低いものへの代替
- 生産工程・作業方法の改良(密閉化・自動化・遠隔操作)
- 局所排気装置等による工学的対策
- 作業方法の改善・作業時間の管理(作業管理)
- 保護具の使用
上から順に「有害要因を根本から消す」→「人と切り離す」→「環境から除去する」→「当たり方を減らす」→「体を守る」と進む。保護具は最後の手段であって、第一選択ではない。「有害物質による健康障害の防止対策としては、まず保護具の使用を検討する」といった肢は、この優先順位に反するので誤りだ。
作業環境管理の主役——局所排気装置
3管理のうち、試験で最も具体的に問われるのが局所排気装置だ。構造は上流からフード → ダクト → 空気清浄装置 → 排風機 → 排気口。ここは順番も含めて出る。
フードは囲い式が有利
フードは大きく3タイプ。
| 型式 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 囲い式 | カバー型、グローブボックス型、ドラフトチェンバ型、建築ブース型 | 発生源を囲む。最も効果が高い |
| 外付け式 | スロット型、ルーバ型、グリッド型 | 発生源の外から吸う。排風量が多く必要 |
| レシーバ式 | キャノピ型(天蓋型)、グラインダカバー型 | 熱上昇気流や回転の慣性を利用して受け止める |
押さえるべきは囲い式のほうが、外付け式より少ない排風量で有害物を捕捉できるという一点。「囲い式は外付け式より効果が劣る」は誤りだ。また、キャノピ型(天蓋型)はレシーバ式であって囲い式ではない——ここも定番のひっかけ。
フードの開口面積を大きくすると、必要な排風量は増える(小さくないと吸い切れない)。「開口面積を大きくするほど必要な排風量は小さくなる」は逆だ。
ダクトは「太いと堆積、細いと圧力損失」
ダクトの太さはトレードオフになっていて、そこが問われる。
- 断面積を大きくする(太い) → 圧力損失は減るが、搬送速度が落ちて粉じんが堆積しやすくなる
- 断面積を小さくする(細い) → 圧力損失が増える
「ダクトの断面積を大きくするほど圧力損失は大きくなる」「ダクトは細いほど圧力損失が小さくなる」は、どちらも向きが逆の誤り。あわせて、ダクトは長さをできるだけ短く、ベンド(曲がり)の数をできるだけ少なくするのが望ましい。長くて曲がりが多いほど圧力損失は大きくなる。
空気清浄装置の「後ろ」に排風機
排風機(ファン)は、空気清浄装置を通過した後の清浄な空気が通る位置=下流に設ける。汚れた空気をファンに通すと、羽根が摩耗したり汚れたりするからだ。「排風機は空気清浄装置の前に設ける」は誤り。
清浄装置の種類も対応を間違えやすい。除じん装置(サイクロン、バグフィルタ、電気除じん装置)は粉じん=粒子を取るための装置で、有機溶剤の蒸気には効かない。ガスや蒸気には吸収・吸着などの排ガス処理装置を使う。「有機溶剤の蒸気を含む空気の清浄化にサイクロンを用いる」は誤りだ。
そして排気口は屋外に設ける。「屋内に設けることが望ましい」は当然ながら誤り。
定期自主検査は1年・記録は3年
局所排気装置は作りっぱなしでは意味がないので、点検が義務づけられている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定期自主検査 | 1年以内ごとに1回 |
| 検査記録の保存 | 3年間 |
| 異常を認めたとき | 直ちに補修その他の措置を講ずる |
「6月以内ごとに1回」「3年以内ごとに1回」「記録は1年間保存でよい」「異常があっても直ちに措置する義務はない」は、いずれも誤りの肢として出る形だ。作業環境測定は6月、局所排気装置の自主検査は1年——この2つは頻度が違うので、セットで区別して覚えておこう。
ひっかけ総ざらい
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 「保護具の使用は作業環境管理」 | 作業管理。環境の濃度は下がっていない |
| 「まず保護具の使用を検討する」 | 保護具は最後の手段。代替・工程改良が先 |
| 「囲い式は外付け式より効果が劣る」 | 囲い式のほうが少ない排風量で捕捉できる |
| 「キャノピ型は囲い式の一種」 | レシーバ式 |
| 「開口面積を大きくすると必要排風量は小さくなる」 | 大きくなる |
| 「ダクトの断面積を大きくすると圧力損失は大きくなる」 | 小さくなる(ただし粉じんが堆積しやすい) |
| 「排風機は空気清浄装置の前に設ける」 | **後(下流)**に設ける |
| 「有機溶剤の蒸気にサイクロンを用いる」 | 除じん装置は粒子用。蒸気は排ガス処理装置 |
| 「局所排気装置の定期自主検査は6月以内ごと」 | 1年以内ごとに1回、記録は3年保存 |
まとめ:切り分け→順番→装置の順で固める
労働衛生の3管理は、①モノ・やり方・ヒトで切り分ける、②保護具と作業時間短縮は作業管理(環境は変わっていない)、③対策の順番は代替→工程改良→局所排気→作業管理→保護具、④局所排気装置はフード→ダクト→空気清浄装置→排風機→屋外の排気口、⑤囲い式が有利・キャノピはレシーバ式・太いダクトは堆積・排風機は清浄装置の後ろ、⑥自主検査1年・記録3年——この順で固めれば、分類問題も装置の細かい問題もまとめて拾える。