「うちの家計、もし自分に何かあったらどうなるんだろう」——生命保険の見積もりを取る前に、まず確認すべきものがある。公的な遺族年金だ。ここを知らずに保険に入ると、たいてい掛けすぎになる。しかも遺族年金は「誰がもらえるか」で毎年のように試験に出る。整理してしまおう。
遺族年金も、老齢年金と同じ2階建て
日本の公的年金が2階建てなのは有名な話だが、遺族年金もまったく同じ構造をしている。1階が国民年金から出る遺族基礎年金、2階が厚生年金から出る遺族厚生年金だ。だから自営業の人(第1号被保険者)が亡くなったときは1階だけ、会社員・公務員が亡くなったときは1階と2階の両方が出る可能性がある、という違いが生まれる。なお自営業世帯で子がいない場合は遺族基礎年金が出ないため、その受け皿として寡婦年金(第1号被保険者として10年以上保険料を納めた夫が年金を受けずに亡くなったとき、婚姻10年以上の妻に60歳から65歳まで支給)と死亡一時金(保険料納付3年以上で、遺族基礎年金を受けられない遺族に一時金を支給)が用意されている。両方の要件を満たす場合はどちらか一方を選ぶ。
そしてこの2つは、もらえる遺族の範囲がまったく違う。ここが最大の分かれ道であり、試験の狙いどころでもある。
遺族基礎年金は「子育て世帯」への給付
遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた**「子のある配偶者」または「子」だけだ。それ以外は一切出ない。父母も、兄弟姉妹も、そして子のいない配偶者も対象外**である。
ポイントは、ここでいう「子」が日常語の子どもではないこと。18歳到達年度の末日(高校卒業の年の3月31日)までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子を指す。つまり末子が高校を卒業した年度末で、遺族基礎年金は終わってしまう。
なぜこんなに範囲が狭いのか。遺族基礎年金は「子どもを育てるお金」という性格の給付だからだ。子育てが終われば止まる——そう理解しておくと、要件が自然に頭に入る。
なお、亡くなった人について保険料の納付要件も問われる。原則として、加入期間のうち保険料を納めた期間と免除された期間の合計が3分の2以上あることが必要だ。
遺族厚生年金は範囲がぐっと広がる
一方の遺族厚生年金は、受け取れる遺族の範囲が広い。優先順位は①配偶者・子 → ②父母 → ③孫 → ④祖父母で、上位の人がいれば下位の人はもらえない。ここでも兄弟姉妹は対象外だ。
そして遺族基礎年金と決定的に違うのが、子のいない妻でも受け取れるという点。ただし夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、5年間の有期給付になる。
また、夫・父母・祖父母が受け取る場合は、死亡当時55歳以上であることが要件で、実際の支給開始は60歳からという独特のルールがある。金額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3だ。
| 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
|---|---|---|
| どこから | 国民年金(1階) | 厚生年金(2階) |
| 受給できる遺族 | 子のある配偶者・子 | 配偶者・子→父母→孫→祖父母 |
| 子のない配偶者 | ×もらえない | ○もらえる(夫は55歳以上) |
| 兄弟姉妹 | ×対象外 | ×対象外 |
| 金額の考え方 | 基本額+子の加算 | 報酬比例部分の4分の3 |
中高齢寡婦加算は「すき間」を埋める仕組み
子どもが高校を卒業すると遺族基礎年金は止まる。でも妻はまだ50代で、自分の老齢基礎年金が始まる65歳までは遠い——このすき間を埋めるのが中高齢寡婦加算だ。
夫の死亡当時に40歳以上65歳未満で子のない妻、または遺族基礎年金を受けていた妻が子の年齢要件を外れて受給できなくなったとき、遺族厚生年金に上乗せされる。支給されるのは40歳から65歳になるまでで、金額はおおむね老齢基礎年金の満額の4分の3にあたる額だ。65歳になれば自分の老齢基礎年金が始まるので、そこで役目を終える。
なお2025年に成立した年金制度改正法により、2028年(令和10年)4月1日から、子のない配偶者の遺族厚生年金は男女差が解消され原則5年の有期給付に移行し、中高齢寡婦加算も新規に発生する分から段階的に縮小されていく(すでに受け取っている人は影響を受けない)。試験で問われるのは当面この改正前のルールだが、制度が動く論点として頭の隅に置いておきたい。
名前のとおり「寡婦」の加算なので、妻が対象。夫には中高齢寡婦加算はない。遺族年金は全体に妻へ手厚く、夫には年齢要件がつくという非対称さがあり、そこがそのまま出題ポイントになっている。
FP3級のひっかけは、ここだけ潰す
| ありがちな思い込み | 正しくは |
|---|---|
| 子のない妻も遺族基礎年金をもらえる | ❌ もらえない。子のある配偶者か子だけ |
| 「子」は18歳未満 | ❌ 18歳到達年度の末日まで(障害1・2級なら20歳未満) |
| 兄弟姉妹も遺族厚生年金をもらえる | ❌ 対象外。父母・孫・祖父母までで打ち止め |
| 遺族厚生年金は報酬比例部分の全額 | ❌ 4分の3 |
| 中高齢寡婦加算は夫にもつく | ❌ 妻のみ。40歳から65歳まで |
まとめ
軸は1本でいい。遺族基礎年金=子育てのためのお金だから「子」が絶対条件。遺族厚生年金=生計維持のためのお金だから範囲が広く、子がいなくても出る。この対比さえ押さえれば、細かい要件は枝葉として乗せられる。そのうえで「兄弟姉妹はどちらも対象外」「厚生は4分の3」「中高齢寡婦加算は40歳から65歳の妻」の3点を押さえておけば、本番で迷うことはほとんどなくなるはずだ。